やくそく する 僕はずっとここにいると

精いっぱいの愛を言葉にすることを 恐れず、怠らず。

鴻上尚史舞台『ローリング・ソング』

新鮮な舞台。そして、新鮮な優馬くんのお芝居。

 

舞台『ローリング・ソング』

 

期待値はずいぶん高かった。何より優馬くんの「鴻上さんの演出を受けたい!」という熱望叶っての出演であり、オリジナルの脚本であり、歌う、ギターを弾く、という前情報もあり。

鴻上さんの演出の仕方に関するインタビューを読んだり、著書を拝読したりなどもして、どんな雰囲気の舞台が出来上がるのかどんどん興味がわき、非常にわくわくしながら待っていたのだが、

その期待値にしっかり応えてくれた作品。

 

 

私自身、音楽が大好きな人間なのですが、

そういう人間からしてみれば、篠崎良雅はあんまりロッカーらしくないな、というのが第一印象。

まあ、劇中でも語られるように、昔のロックをやる人間と今のロックはだいぶ違うからなあ、(雅生のここのくだりめっちゃ笑った)

まあそんなものかな、と思いながら観ていたのですが。

 

でも、それは、音楽をやっていくことに迷いを感じていたからだったのだと。

最後のライブでわかりました。

だって、篠崎良雅がすっごく良い顔をしているから。

あの瞬間は、ただ純粋に、今歌いたい曲を歌っているんだ、という喜びでいっぱいで。

それまではなんだか釈然としなくて、やってやるぜ!という感じがしなくて、ロッカーぽくなかった良雅が、ああこれから音楽をやっていくんだな、と思わせるような顔をしている。

 

音楽をやるには、ただ音楽をやりたいっていう気持ちが何よりも必要なのだなと思います。そしてその音楽を心から楽しむということが。

 

 

この物語では、はっきりと、誰かが救われるとか、誰かが幸せになるとか、そういう風に描かれて終わるわけではない。

良雅がこれから音楽でやっていけるのかわからないし、雅生の会社だって再建して上手くいくのかわからない。小笠原もちゃんと詐欺師の自分と決別して、久美子さんのところに戻ってこられるのかどうか、わからない。

でも、きっと大丈夫なんだろうな、と思わせる。

だって最後、みんな良い顔をしているから。

なんと最後をライブで締めるとは!と驚いたのだけれど、その粋な演出が物語っている。

だから、観客も皆ハッピーな気持ちで観終わって帰れる。

 

 

「夢。」

観る前はなんだかピンとこなかった。

だって、正直あまり夢を見られる時代じゃないから。

そういう自分には、夢はあるけれど、

でもこういうところで語られる「夢」とは遠いところにあるような気がしてしまう。もうちょっと現実的な夢だから。

 

でもこの物語で描かれる「夢」は、ちゃんと現実の私たちに寄り添う、それぞれの「夢」だった。

夢を見れなくなりかけたけれど、もう一度取り戻す若者。

ロッカーの夢を捨て平凡を選んだけれど、この場所で自分らしくあるという形もまた、夢だと気づく中年。

ひたむきな人たちを目の当たりにして、愛を見つけて、それが一番自分が求めていた夢だと知る60代の男。

 

「夢」って、それでいいんだ。

夢を見る、追いかけるって特別な、大層なことだと思ってしまうけれど、違うんだ。そう思える、あたたかな物話でした。

 

 

そんな舞台で演じる優馬くんは、とにかく楽しそうで。

感情を発散し、台詞をまくし立てる姿が新鮮だった。

 

よくよく考えてみたら、

ジャニーズの舞台はひとまず置いておくとして、

優馬くんが、現代が背景の舞台で、普通の青年を演じたのは初めて、ですよね。

何かを背負わない役、というのも。

それが非常に新鮮でした。

 

恐らく多くの方が思っているであろう、

中山優馬は影を背負った役が似合う」という事実。

たしかに私も、彼はそういう役が非常に上手いというか、優馬くんにしか演じられないように演じることができるなあ、といつも思う。

 

しかし鴻上さんは、そこをぶち破ってきてくださった。

そしてその結果、

背負っていない役だって、すっごくいいじゃん!と思った。

本当はお母さんの思いや、父親への憧れ、音楽への迷いを背負っていたとも言えるかもしれないけれど、そこにフォーカスするのではなく、それをコミカルに発散する役。

特に、雅生とのシーンで

台詞をぶちまけていくテンポが絶妙で。

その絶妙さに、観客が本当に自然に笑ってしまう!

見事でした。

相変わらず台詞を噛まないところも本当に凄いとも思う。噛んでしまうとあのテンポが崩れてしまうから、大事だ。

 

 

色んな優馬くんを、役を通して見られることはやっぱり贅沢だなあと思う。

まだまだこんな役柄やあんな役柄を演じてほしいなあ、色んな優馬くんを見せてほしいなあ、と思ってしまう。

 

そしてその反面、

やっぱり優馬くんには歌ってほしい!とも思った今回の作品。

伸びやかで、感情を乗せるのが本当に上手くて、引き込まれてしまう、優馬くんの歌を、もっともっと聴きたい。

 

ギターの弾き語り、本当にかっこよかった!!!

一幕終わりの切ない弾き語りも、

最後の楽しそうなライブシーンも、

とってもよかった。

ここで終わらず、またどこかで見せてくれるといいなあ、と思います。

 

 

まだまだまだまだ、中山優馬という人の可能性を感じます。

色んなものを見せてもらって本当感謝。

そして、もっと見たい。

 

『ローリング・ソング』自体も、

観てしばらくすると、また観たいなあ、と何度でも思わせる不思議な力がありました。

 

ああ、また観たいなあ!

 

 

久しぶりのブログ、お読みくださりありがとうございました☺︎

 

 

Ayana